「おまたせ。ほら、たつもおいで」


そう言って、リビングの大きな楕円形のローテーブルにお盆を置く。

そうして並べられたのは。


「さっき買ってきたの。ここのお菓子はどれもとびきり美味しいから食べてみて」


どら焼きやおまんじゅうといった和菓子たちだ。

たくさん種類があるようで、実は洋菓子よりも和菓子の方が好きな私は目移りしてしまう。

どうしようかなと悩んで、ようやくひとつのおまんじゅうを手にすると、女将さんは温かい紅茶を出してくれた。


「これは和菓子にも合う紅茶なんだよ」


そう勧められて火傷しないように気をつけながら飲んでみると、ウーロン茶のような香りがして確かに和菓子に合う味だ。


「わぁ、合いますね! 美味しいです」

「それは良かった。たくさん食べていいからね」


紅茶も、お代わりしてねと言われて、私は「ありがとうございます」と軽く頭を下げる。

たつ君が半分にちぎってもらったたい焼きを食べているのを見て、その可愛さに和んでいると、ふいに女将さんが立ち上がった。


「八雲が降りてこないね。ちょっと見てくるから、たつをよろしくね」

「あ、はい」


頷くと、女将さんは二階へと上がって行く。

途中で八雲君の名前を呼んでいたけど、八雲君の返事は聞こえなくて。

やがて、階段を降りる音が聴こえてきて女将さんが戻ってくれば、彼女は軽く肩をすくめて「寝てたよ」と笑った。

きっとあちこち回って疲れたんだろうと。