母屋には民宿の廊下から行き来できるようになっていて、二つの建物を繋ぐ木製の扉を開けると、無垢の床が広がるサンルームが現れて、更にその先には天井の高い古民家調のリビングがあった。
「適当に座ってて」とキッチンに入る女将さん。
適当にと言われると困るなとリビング内を見渡すと、奥の方が畳のスペースになっていて、そこでたつ君がミニカーで遊んでいた。
たつ君は私に気づくと手を止めてキョトンとする。
多分、なぜここにいるのか不思議なのだろう。
私は畳スペースの手前まで進み、そこでしゃがみこむと怖がらせないように笑みを浮かべた。
「おやつ、ご馳走になることになって。少しだけお邪魔します」
伝えてみると、たつ君は理解したようで「いっしょ?」と確認してくれる。
「そうなのかな? たつ君はおやつ食べた?」
「たべてない」
「じゃあ一緒かもしれないね」
そんな風に会話をしていたら、女将さんがお盆を手に戻ってきた。