「怖いね。私も気をつけなきゃ」
「お姉さんは車よりもご飯ちゃんと噛んでから飲まないと」
「うっ……気をつけます……」
小学生に窘められて、肩を小さくした刹那。
ひらり──。
冬桜の花びらがひとひら。
私の目の前で柔らかく踊り、車道に落ちる。
一瞬、御霊還りの社から飛んできたのかと思ったけれど、ここからは距離もあるのでなかなかないだろう。
この近くに咲いているのかもしれない。
そう考え、花びらを見つめていたら。
「お姉さん、バス来ちゃうよ」
すでに反対側の歩道に渡っていた八雲君に呼ばれて。
「ご、ごめんね」
私は、なぜか桜の花びらが気になりながら、八雲君と一緒にバスに乗り込んだ。
車中では、紙芝居はどんな感じの絵にするか、何枚くらいでまとめるかを話し合い、昨日よりも更に八雲君と仲良くなれたような気がしながらみなか屋へ帰ると。
「おかえり、二人とも!」
女将さんが満面の笑みで迎えてくれた。