今日は私に奢らせてと言って支払いを済ませ、仕事に戻るヒロと別れて。

商店街からバス停に向かう途中、八雲君は道路を渡る前にピタッと止まって左右を確認した。

今日、何度か八雲君と道路を渡っているけど、こんなに慎重になっているのは初めて見たので思わず首を傾げてしまう。

私が不思議がっているのを察したのか、八雲君は言った。


「ここで事故があったんだ」

「えっ、そうなの?」


まさか、みなか屋の誰かなのかと眉を寄せると、彼は「母ちゃんが言ってた」と家族や自分の知り合いではないのだと教えてくれる。

確かにここは横断歩道も信号もない場所だし、見通しも少し悪い。

詳しく聞けば、どうやらその事故は酔っ払いが運転していた車が起こしたらしく、八雲君は女将さんに『お前はすぐに走り出すから気をつけなよ』と言われたようだ。

それにしても飲酒運転で事故に巻き込まれるなんてひどい話だ。

気をつけていても車が突っ込んできてしまっては避けようだってなかっただろう。