「アイツって……?」
「……ナギしかいないだろ」
そう言ってから、湯飲みに口をつける。
「ナギは会いに行くつもりだったんだ。凛に」
「いつ?」
「多分、高校を卒業したら。俺にその話をしたのは先月の……十一日」
初耳だった。
昨日だってそんな話は聞いてない。
ただ、会いたいと思っていてくれていたことは伝えてくれてたけど……。
「ごちそうさまでしたー」
思考を遮るように聞こえた八雲君の声に、私はハッとして彼を見た。
八雲君は完食したようで、話していたせいでまだまだおかずやご飯が残る私のお皿を確認すると、女子ってなんで食べるの遅いのとヒロに聞いている。
「ご、ごめんね。急いで食べちゃうから」
苦笑いを浮かべてから慌てて食べるスピードを速めた私。
それを見たヒロが喉に詰まるぞと忠告した矢先にむせてしまうと、二人は呆れた様子で私に湯飲みを渡してくれたのだった。