「テット、それは、いつもみたいな七夕への参加の仕方とは、違うことをしようってことだよな」

マサムネ先輩も、そして他のみんなもテットの真意に気づいていた。
わたしはテットの言葉を、単に七夕まつりに参加するという意味で取ってしまったけれど、そうではなく、言葉通りの意味なのだとしたら……去年とはまるで違う。

「そうっすよ、マサムネ先輩。今年は裏方じゃない。図書館の横の願いごと広場、あそこのステージに出演しましょうって言ってるんですよ」

それは今までのわたしたちには縁のなかったことだ。舞台の下ではなく、上に立つなんて。

「出演っていうと、去年はダンスとか演奏会とかやってたけど、それをおれたちでやるってことか?」
「そのとおり。まあ、何をするかまでは考えてないっすけど」

テットはへらっと笑い、ふたたび椅子に座る。

「この間、父ちゃんたちに廃部のことがばれただろ。そしたら父ちゃんや商店街のみんなが、だったら最後に華持たせてやろうぜって、今まで裏で働いてたおれたちに表に立ってみることを勧めてくれたんだ。西高の『なんでも屋』なら自分らでまつりを盛り上げるのもお手の物だし、これも地元の活性化の手伝いのひとつだろって勝手なことまで言ってさ。
正直おれ、自分で言っておいて、パフォーマンスなんてできる自信ないけど、みんなで何かできるならやってみたいなって」

無理だと思った。去年、仕事の合間にいくつものステージを見たが、あれを自分もできるとはとても思えない。
大体が、あの舞台に立つ人たちのほとんどが、常日頃から演技や演奏の練習をしているのだろう。わたしたちが気楽にさあやろうと言って、たった三ヶ月で立てるステージではないはずだ。

それでも、心底からテットの言葉を否定できないのは、最後に何か──何ができるかまではわからないけれど、みんなで何かをしたいとは、わたしも考えていたからだ。
これで終わりだとしても、十年先もはっきり思い出せるような、いつまでも記憶として続くものが残せたら。