「あの子、好きになったら苦労しそうだね」
「え、あの子って……吉木ですか?」
「なに考えてるかわかんないって言われて、フラれるタイプの男だね」
「なにを考えているか……」
吉木がなにを考えているかなんて、きっと誰も分からない。人の気持ちは、その人自身に聞くまで誰にも分からない。本当は、もっと吉木自身に問いただしてみたいことが山ほどある。

「なにガールズトークしてんの? 混ぜて混ぜて」
「酒臭っ、充あんた弱いのにもう飲んだの? やめてよもう」
「男性陣、もうほぼ仕上げてるぜ」
「バカ、あっちいけ」
宗方兄はすでに顔を赤くしていて、宗方兄の友人たちも出来上がっているようだった。お姉さんは泥酔した宗方兄が面倒だったのか、寝かしつけにロフトへと向かった。長谷川も宗方君も飲まされてしまったのか、自ら飲んだのか、異様にテンションが上がっていた。ふと万理が心配になったので、一度部屋の中に入ると、もう一人のお姉さんと真剣に恋話をして号泣していた。きっと最近別れた彼氏のことを思い出してしまったんだろう。

「ちょっと吉木、コンビニでお茶買ってきてよ、飲み足りないわ」
「なんでお前お茶で酔えるんだよ。自分で行けよ」
「万理、私が行くよ」
吉木にまで絡み始めた万理を見て、思わずヒヤッとしてしまった私は反射的に私が行くと言ってしまった。吉木はそんな私をじろりと見て、目で「こいつを甘やかすな」と訴えてきた。でも、こんなに酔いが回っている中で、ソフトドリンクがない状態は危険だし、私もついでに夜風に当たりたい気持ちだった。