瞼の裏に、あの日、「私達のことが好きか」と問いかけた万里が思い浮かぶ。今なら分かる。どうしてそんなことを聞いてきたのか。
「ちゃんと言ってなかったけど、吉木が好きだよ」
君と一緒にいる意味はとてもシンプルで、忘れてはいけないお守りのようなこの言葉は、伝えないと意味がないのかもしれない。
吉木は、一瞬驚いたような表情をしたけれど、うん、と頷いて私の頭を優しく撫でた。
「分かってる」
そう言って、唇が優しく触れ合った。相変わらず、彼の行動は突拍子がない。だけど、体温が重なり合うだけで、こんなにも信頼し合っているような気持ちになるのは不思議だ。
分かってる。ぶっきらぼうなその言葉を聞いただけで、こんなにも安心してしまうのはなぜだろう。
そのたった一言が、胸の中にじんわりと響いて、自分の気持ちがちゃんと彼に伝わっていることに、なぜかふと泣きたくなってしまった。
自分の気持ちを分かってもらえている。そんなことで、こんなにも胸が苦しくなるなんて。こんなにも、君が愛しくなるなんて。