天士ホウレイの配下、謀反兵のカグムとハオは、石切ノ町を歩いていた。
名の通り、そこは石材を売りにしている町で、上質な石を揃えている。
また、とりわけ石大工が目立つ。彼らの腕前は一級と呼ばれ、それに惹かれ、都の貴族が依頼することも少なくない。
そんな石切ノ町で二人は聞き込みを行っていた。
手分けして、ここ数日の間におなごのように美しい男と、小柄な少年を見掛けなかったか、と尋ねて回る。
すると。石売りの商人達が口々に教えてくれた。
「美しい男は分かんねーけど、見掛けない坊主は相手にしたよ。そりゃもう、上等な縄を作る奴でさ。石売り商人や石大工がここぞと声を掛けていたね」
石材を売りにしている町は、それを運ぶための丈夫な縄を欲している。しかし、なかなか入手し難く、買おうとしても高額で売られることが多い。
けれども、その少年は手頃な値段で縄を売ってくれた。お金が用意できない商人や石大工には物々交換で取引をし、食糧や道具を得ていた。
とても良心的な少年だったと、皆は口を揃える。
「そういえば、顔は見せない無口な奴がいたな。坊主の手伝いをしていたっけ。男か女かは分からなかったが。町に留まってくれたら、石大工達も助かっただろうに」
石大工の親方が雇おうとしたほど、その少年の売る縄は良かったそうだ。注文すれば、縄を太くも細くもできる、強度も変えられる、器用な少年だったと彼らは教えてくる。
少年と無口人間の行方を尋ねると、石売りの商人はこう答える。
「次の町を目指すって言っていたな。この辺りだと、仙ノ村が近いって教えたから、そこに行くって答えていたぞ」
石大工の親方も答える。
「世間話がてらに海の話をしたら、そこに行ってみたいと言ったから、道順を教えてやったよ。今頃、梁河に沿って歩いているんじゃねーか?」
露店で野菜を売る行商も答えた。
「あの坊主なら、山を越えた宇長ノ都に行くって。若いもんほど、人の多いところに惹かれるんだろう」
聞き込みを終えたカグムとハオは、苦い顔を作る他ない。誰もが有力な話を教えてくれるのに、誰ひとり同じことを言わない。
「どーなってるんだよ。どれを信用すればいいのか、ちっとも分からないぜ」
頭を掻きむしるハオの隣で、カグムが深いため息をつき、軽く笑声をもらす。
「こりゃあ、ユンジェの悪知恵だな。ったく、間諜をこなす俺達を翻弄するなんて本当に厄介な奴だよ」
味方であった時は心強かったが、敵になると、こんなにも手が掛かるとは。
「またあのガキかよ。勘弁してくれって……ホウレイさまにピンイン王子を連れて来ると、早馬を出しちまっているのに」
町人によると、二人は真夜中に町を出て行ったそうだ。夜に動き、どこへ向かったのか、分からなくしようという魂胆なのだろう。
カグム達から姿を晦ました二人は徒歩。馬ならすぐ捕獲できると思ったのだが、これは骨が折れそうだ。
「さすが、麒麟の使い。呪われた王子に認められし、懐剣小僧だな」