「ここに十の豆がある。これは人間だ。お前はこの人間を指揮する長、今から敵と戦わないといけないお前は、十の人間に役割を与えた。どんな役割を与える? なお、敵のことは一切分かっていないことにするぞ」

 なぜ、カグムがこんな質問をしてきたのかは分からないが、聞かれた以上、答えなければいけないだろう。

「そうだな。動かす人間達の特徴にもよるけど」

 ユンジェは豆を二つ取って、カグムの前に置いた。

「まず。この二人に敵と地形のことを調べてもらう」

「それはなぜ? 全員で突っ込めばいいじゃないか。勝てるかもしれないぞ」

「何も分かっていないのに、突っ込むなんてばかの極みだろ。敵がもし、土地のことをよく知っていたら、突っ込んでも撒かれるかもしれないし」

 敵と戦う時間によっては、地形が敵になるかもしれない。そこに崖があったら、落ちて怪我を負うかもしれない。天候が今みたいに雨であれば、泥沼に足を取られるかもしれない。

「知らないと、負けに繋がる」

 なので、まずは二人に調べてもらう。

「ある程度のことが分かったら、敵の不意を突くために、前から三人に斬り込んでもらって。そっちに夢中になっている間に、後ろに回って、三人で斬りかかる」

「残りの二人は?」

「左右に置いて、前と後ろの繋ぎになってもらう。間に人を置くことで、うーんっと、上手く言えないんだけど、前後の様子が早く分かるじゃんか」

 前方、後方に各々問題が起きても、間に人を置くことで、早くそれが伝わるのではないか、とユンジェは考えた。

「こういうのって、敵よりも早く不意打ちを取って、味方と連携を取って、そんで追い込むのが大切だと思う。これが俺の答えだけど」

 含み笑いを浮かべるカグムの視線に気付き、ユンジェは決まり悪く口を閉じた。
 その笑みの意味は何だ。変なことを言った覚えはないが、もし阿呆なことを言ってしまったのなら、いっそ清々しく笑ってほしいもの。

 カグムがハオに視線を投げる。

「どうだ。いまの」

「怖ぇよ。学びすら受けたことがないってのが、また怖ぇ」

 なんだというのだ。はっきりして欲しい。ユンジェはおかしな点でもあったか、と問う。
 カグムはかぶりを横に振り、「その逆だよ」と言って、乾燥豆を集めると、ユンジェの手に落とした。

「立派な策になっていた。荒削りだが役割の意味をちゃんと把握し、どうすれば戦に勝てるのか、しっかり見通している。ユンジェ、お前、玄州に着いたら隊に入ってみないか?」

「え?」

「ホウレイさまに掛け合ってみるからさ。隊に入るなら、献上のことも考え直すぜ?」

「隊? それってカグム達みたいに、俺が兵になるってこと?」