「サエ、今日部活休みだし、服見に行かない?」
「えー、休日もTシャツにハーパンで間に合ってるしなあ……」
七時間目の授業を終えた帰り道、分かれ道で、突然梓が笑顔で立ち止まる提案してきた誘いを断った。だってファッションには興味がないし、今日は雨が降りそうだし、雨の日は古本屋に行くことが好きだし……。梓は呆れた瞳で私を見てきたけれど、私は目を合わせずに、えへへと苦笑いをした。
「精々そうやってモテ期一生逃してなさい、日向もこんなあんた知ったら幻滅よ。」
梓はそう捨て台詞(ぜりふ)を残して駅に向かっていった。ごめん、とその背中に向かって叫んだけれど梓は無反応だった。”幻滅”……かなりグサッとくる言葉だった。でも、流行とかに興味ないものはないのだから仕方ない。それ以前に、日向君は別に私のことなんか好きじゃないし。ちょっと舞い上がってしまっていたのは本音だれけど、今日隣に座ったとき、日向君は少し困ったような顔してた。私は、ちくっとした痛みを胸に感じながら交差点を左に曲がって、いつも足を運んでいる古本屋に向かった。
少し歩くと見えてきた青い看板。その横に、明らかに駐車に不便な狭い駐車場があるのだけれど、珍しく一台車が止まっていた。私はその車をチラッと見ながらも、色あせた漫画のポスターが貼られたガラスの自動ドアを通り、店内へ入った。
全て縦に整列した本棚に、たくさんの小説や漫画が詰まっている。やっぱり雨の日は古本屋が一番。雨の日特典で安くなった漫画を買って読むのが一番でしょ、と私はうきうきしながら奥の少年漫画コーナーへ向かった。
そのときだった。日向君らしき人を見つけたのは。主に古書が置かれているコーナーに、長身の男子高校生が一人真剣に何かを読んでいる。間違いなくあの制服は私が通っている高校と同じものだ。それにあの漆黒の髪、モデルのような体形、何よりあの綺(き)麗(れい)な横顔、どこからどう見てもその男子高校生は日向君だった。
あんなに真剣になって、一体何を読んでいるのだろう。とりあえず、声をかけよう、そう思った途端、日向君はハッと何かに気づいたのか、読んでいた本を小走りでレジに持っていってしまった。
そんな、今声をかけようとしたところだったのに。けれど、日向君の表情は険しく、とても話しかけられる雰囲気ではなかった。日向君は会計を済ますと、大事そうに本を抱えてすぐに店から出ていってしまった。そんなにあの本が早く読みたかったのだろうか。不思議に思った私は、よくないと思いつつも、彼がさっきまでいた棚に恐る恐る近づき、抜かれた本の場所を確認した。
そこには、読心術関連の本や、スピリチュアルな内容の、どこからが嘘でどこまでが本当なのか分からないような書籍が集められていた。こんな棚、一度も興味を持ったことはないし、こんな本が出版されていることさえ知らなかった。日向君、意外とオカルト好きなのかな。
私は、結局その後もなんだかふわふわと日向君が頭に浮かんできて、結局漫画の立ち読みに集中できなかった。店から出て、家へ帰る途中も、さっきのただごとではない様子の日向君の表情が頭から離れない。もしかしたら、さっきのは避けられたのかな。なんて今更思って落ち込んだ。だって私の方を向いた瞬間に去ったし。昨日だって、そうだった。
もし心が読めたら、日向君にはフル活用できそうだ。日向君はさっぱり何を考えているのか分からないから。
「えー、休日もTシャツにハーパンで間に合ってるしなあ……」
七時間目の授業を終えた帰り道、分かれ道で、突然梓が笑顔で立ち止まる提案してきた誘いを断った。だってファッションには興味がないし、今日は雨が降りそうだし、雨の日は古本屋に行くことが好きだし……。梓は呆れた瞳で私を見てきたけれど、私は目を合わせずに、えへへと苦笑いをした。
「精々そうやってモテ期一生逃してなさい、日向もこんなあんた知ったら幻滅よ。」
梓はそう捨て台詞(ぜりふ)を残して駅に向かっていった。ごめん、とその背中に向かって叫んだけれど梓は無反応だった。”幻滅”……かなりグサッとくる言葉だった。でも、流行とかに興味ないものはないのだから仕方ない。それ以前に、日向君は別に私のことなんか好きじゃないし。ちょっと舞い上がってしまっていたのは本音だれけど、今日隣に座ったとき、日向君は少し困ったような顔してた。私は、ちくっとした痛みを胸に感じながら交差点を左に曲がって、いつも足を運んでいる古本屋に向かった。
少し歩くと見えてきた青い看板。その横に、明らかに駐車に不便な狭い駐車場があるのだけれど、珍しく一台車が止まっていた。私はその車をチラッと見ながらも、色あせた漫画のポスターが貼られたガラスの自動ドアを通り、店内へ入った。
全て縦に整列した本棚に、たくさんの小説や漫画が詰まっている。やっぱり雨の日は古本屋が一番。雨の日特典で安くなった漫画を買って読むのが一番でしょ、と私はうきうきしながら奥の少年漫画コーナーへ向かった。
そのときだった。日向君らしき人を見つけたのは。主に古書が置かれているコーナーに、長身の男子高校生が一人真剣に何かを読んでいる。間違いなくあの制服は私が通っている高校と同じものだ。それにあの漆黒の髪、モデルのような体形、何よりあの綺(き)麗(れい)な横顔、どこからどう見てもその男子高校生は日向君だった。
あんなに真剣になって、一体何を読んでいるのだろう。とりあえず、声をかけよう、そう思った途端、日向君はハッと何かに気づいたのか、読んでいた本を小走りでレジに持っていってしまった。
そんな、今声をかけようとしたところだったのに。けれど、日向君の表情は険しく、とても話しかけられる雰囲気ではなかった。日向君は会計を済ますと、大事そうに本を抱えてすぐに店から出ていってしまった。そんなにあの本が早く読みたかったのだろうか。不思議に思った私は、よくないと思いつつも、彼がさっきまでいた棚に恐る恐る近づき、抜かれた本の場所を確認した。
そこには、読心術関連の本や、スピリチュアルな内容の、どこからが嘘でどこまでが本当なのか分からないような書籍が集められていた。こんな棚、一度も興味を持ったことはないし、こんな本が出版されていることさえ知らなかった。日向君、意外とオカルト好きなのかな。
私は、結局その後もなんだかふわふわと日向君が頭に浮かんできて、結局漫画の立ち読みに集中できなかった。店から出て、家へ帰る途中も、さっきのただごとではない様子の日向君の表情が頭から離れない。もしかしたら、さっきのは避けられたのかな。なんて今更思って落ち込んだ。だって私の方を向いた瞬間に去ったし。昨日だって、そうだった。
もし心が読めたら、日向君にはフル活用できそうだ。日向君はさっぱり何を考えているのか分からないから。