相変わらずこいつにはオブラートに包むという配慮がない。

呆れてそのまま無言で歩いていると、随分間を置いて一之瀬が答えた。


「話したこともない一年。結構しつこかったから、ハッキリ振った」

「お前がそれ以上ハッキリ言ったらどうなるんだよ……」

「別に、当然のこと言っただけだよ。俺好きな子いるからごめんって」


それを聞いたとき、なぜか一瞬もやっとしたものが胸に広がった、気がした。

平静を装って、俺は更に質問を投げる。


「一之瀬が好きな子って」

「もっちーだよ、バレバレだろうけど」

あまりにも当然のように、なんの恥ずかしげもなくそう答えるので、俺はどう反応したらいいのか分からなくなってしまった。

一之瀬が望月に好意を寄せていることは知っていた。

だけど、こんなに直接的に言われると、知っていたのにそこそこ衝撃がある。

何も言わずに色んなことに考えを巡らせていると、一之瀬がピタッと止まって、俺の顔色をうかがってきた。


「翔太も知ってたでしょ、いくら鈍くても」

「おい、最後の言葉余計なんだよ」

「秋祭り、もしかしてもっちーと会った?」

「え……」

なんの脈絡もない質問に、俺は完全に狼狽えてしまった。

一之瀬はそんな俺の反応を一瞬も見逃さないというように、瞳をじっと見つめてくる。

それから、更に追い打ちをかけるように話し続けた。


「……自覚してないようだから言うけど、あの日もっちーを泣かせたのは翔太だよ」

「自覚って……、俺だってあの日のことずっと謝りたくて」

「理由も分かってないのになんて?」


一之瀬の言葉に、何も返せなくなって、俺は黙り込んだ。

謝りたい。だけど理由がわからない。どうして望月は泣いたのか、一体何に傷ついたのか。

できれば仲直りしたいのに、前みたいに話したいのに。

そう思えば思うほど、自然に話す機会を失っていく。


「……ごめん、キツく言い過ぎたわ」

押し黙っていると、一之瀬が珍しく、申し訳なさそうに僅かに口元を歪めた。


「翔太は何も悪くない。何も悪くないから、悪いんだ……」

「……は? 何、どういうこと?」

「俺、翠から全部聞いたよ。想いを伝えあったことも、そのきっかけがもっちーのお陰だったってことも」

今日の一之瀬はいつも以上に会話の順序がめちゃめちゃだ。