雛の分も込めて、一番に応援するから。






あの秋祭りの日から、望月と話すことがめっきり減った。

俺は話しかけるタイミングを失ったまま、あの涙を思い出すたびに胸を痛めていた。

いつもみたいに話したいのに、望月はそうじゃないのかな。

だったら、きっともう話しかけないほうがいい、理由は分からないけれど、きっと俺が無神経なことを言ってしまったんだろう。

できれば謝りたいけど、謝る隙も望月は与えてくれない。


心の中に大きな穴が空いたような、そんな気持ちのまま季節は移ろいで、女子はカーディガンを羽織るようになり、男子もブレザーをしっかり着る生徒が増えた。

一気に肌寒くなり、運動着も長袖のジャージが必要となるくらいの気温になった。


「お疲れ、一年はボール片づけてから帰るように」

部長の掛け声と共に、後輩たちがボールを拾いに行く。

俺はジャージのジッパーを口元まで上げて、この寒さから逃げ去るように部室へと小走りで向かう。

いつも通り部室で荷物をまとめて着替えていると、ふと一之瀬がいないことに気づいた。


あいつ、どこ行ったんだろう……。

荷物を担いで、俺はなんとなくもう誰もいない練習場をひょこっと覗いてみた。

すると、ゴール裏にある倉庫の近くで、一之瀬が後輩の女子と二人きりでいる様子が見えた。

ただならぬ雰囲気が流れていたので、さすがに鈍い俺でも分かる。恐らく告白されているんだろう。

そうこうしている間に話を終えた一之瀬がこちらにやってきたので、俺はなぜか慌てて部室に隠れようとしてしまった。


「翔太、なに挙動不審にしてんの」

「いや、なんとなく……」

「帰ろうぜ、速攻で着替えてくる」


一之瀬は、宣言通り一分足らずで着替え終わり、校門で待つ俺の元へやってきた。

俺と一之瀬と翠は最寄り駅が一緒で、入学当初はたまに三人で帰ったりしていた。

そういえば、翠のことについてまだ一之瀬にも話していない。

お互い好きだったけど付き合わなかったという説明を、どんな風にしたら分かってもらえるのか、自信がなくてタイミングを逃し続けている。

それに、あんまり人にベラベラ話していいことでもない気がして。


「……さっきの告白?」

会話を引き出すために聞くと、そんなに興味もないこと聞くなよ、とズバッと返された。