考えれば考えるほど胸の仲が苦しくなって、呼吸が上手くできない。

花を持ったまま、ただひたすらに歩いていると、目の前から歩いてきた人とぶつかりそうになって俺は足を止めた。

……偶然そこにいたのは、見慣れたクラスメイトだった。


「……もしかして、望月?」

「えっ……、なんでこんなところに」


どうして望月がこんなところに……。

罪悪感で頭の中がいっぱいになっていたところで突然会ったので、ほんの少しだけ力が抜けた。


「どこ向かうの? 寄り道ってことは行き先あるんでしょ? 送るよ、昼だけど」

「えっ、いいよっ」

なんだかひとりになりたくなくて、自分勝手な提案をしてしまった。

望月の顔を見た瞬間、不思議と強張っていた表情が解けていくのを自分でも感じた。


……今、ひとりになりたくない。

まだ駅につかないでくれ。

そう思いながら、一緒に並んで歩いた。












誰でも言い訳じゃない。

なんだか今、どんなことにも一生懸命で明るい望月と一緒にいるだけで、心が軽くなれる気がしたんだ。


「じゃあ、ここで」

「うん、またね」

しかし、そんな思いなんて言葉にしなくちゃ伝わらないのは当たり前だ。

俺は気持ちを押し殺して、望月に手を振った。


……これからどうしよう。

握りしめた黄色い花が、雨に濡れて重たさを増していく。

すべてがもう、取り返しのつかないことだって分かっている。

翔太、と雛が俺の名前を呼ぶ声が、頭の中に響いている。


忘れたい、逃げ出したい、考えたくない、忘れちゃいけない、伝えられない。

苦しくて、深く息が吸えない。眩暈がする。

「星岡君!」

当てもなくよく分からない田んぼ道をふらふらと歩いていると、さっき別れたばかりの望月の声が聞こえた。

そんなはずはないと思って振り返ると、そこには息を切らした様子の望月がいた。

……なんで俺を追いかけてきたのか。

こんな雨の日に、靴だってもうびしょびしょに濡れている。


「星岡君……あの」

彼女は何かを言いかけて、気まずそうに目を伏せた。

透明のビニール傘越しじゃ、彼女の表情が上手く見えない。

俺は、彼女に一歩近づいて、どうしたの? と、顔を覗き込んだ。