前に住んでいた東京との違いに驚きながらも、ビニール傘を通してその景色を眺めていた。


……すると、向こう側から一人の男性がこちらに向かって歩いてくることに気づいた。

こんな人通りの少ないところに、一体何の用があるんだろう。

きっと私も相手にそう思われているだろうけど、不思議に思いながら私も歩みを進めた。

有名な某スポーツブランドの紺のスニーカーが、数メートル先でぴたりと止まったので、私は顔を上げた。


「もしかして、望月?」

「えっ……、なんでこんなところに」

聞き覚えのある声に驚くと、目の前には私と同じように目を丸くしている私服姿の星岡君がいた。

星岡君は、ネイビーのTシャツに細みのGパン姿という、とてもラフな格好をしていた。


「俺は、墓参りに行った帰りで……、望月こそなんでここに?」

「私は、ただの寄り道で……。結構ここから家近いんだ」


そう返すと、星岡君はまだぎこちない反応のまま、寄り道って、と静かに突っ込んだ。

この夏休み、星岡君に会えるとは思っていなかったから、思わぬ偶然に心臓がドギマギしてしまった。

なぜこんな適当な恰好で出てきてしまったんだろう。

私はついさっきの自分を呪いながら、気まずそうに隣の畑に目を逸らした。


「なんか、学校以外で会うの変な感じだな」

「そうだね、なんか何話したらいいのか分からないもんだね……」

正直にそう言うと、星岡君はふっと吹き出して、何がおかしいのか笑ってくれた。

その笑顔を見たら、変な緊張が解けて、私もつられて少し笑ってしまった。


「いつもは一之瀬が突拍子もないこと言って話題作ってくれるからな」

「そうだね……。一之瀬君のありがたみを知るね」

「どこ向かうの? 寄り道ってことは行き先あるんでしょ? 送るよ、昼だけど」

「えっ、いいよっ」


私は慌てて手を横に振ったが、星岡君はスタスタと私の進行方向と同じ方向に歩きだしてしまった。

星岡君の、こういう予想できないところに、なんだか一々ドキドキしてしまう。

どうして星岡君は、こうやっていつも無意識に胸の中をかき乱すんだろう。こっちの気も知らないで。


……私は水たまりを蹴散らして、小走りで彼のあとを追った。


「これからどこにいく予定だったの?」

「あ、電気屋に。電球買ってきてって、お使い頼まれちゃってさ」