これさえ乗り越えてしまえば、あとは実技に集中することができる。
解放されたわけではないけれど、また新たに気持ちの切り替えがついた私は、少しだけ足取り軽く帰宅した。
「ばあちゃん、ただいま。疲れたけん、あったかい麦茶あるー?」
「おかえり、よう頑張ったね。ついでにあお君にも持ってってやって」
まだ葵は実家に向かってないのかな……?
それともばあちゃんがつい忘れているだけかな。
そう疑問を抱きながらも、私は麦茶を二人分注いで、二階に向かった。
それから肘で葵の部屋のドアを開けて、中に入った。
「葵、麦茶持ってきとうよー……え?」
しかしそこに葵はおらず、代わりに畳の上に、私が壊したはずの作品が置いてあった。
あんなに粉々に壊したはずの作品たちが、綺麗に復元されて、畳の上に並べられていた。
「どういうこと……葵、いないの?」
当たりを見まわして葵を呼んだが、しんと静まり返った部屋には私の声しか響かなかった。
なんだか嫌な胸騒ぎがして、私はタンスを開けたが、服も何もかもそのまま入っていた。
なんだ、ただの思い込みに過ぎなかったか。
そう安心したところで、タンスの上に『萌音へ』と書かれた一枚の手紙を見つけた、
封筒にも何も入っていない、白い便箋をただ二つ折りにしただけの、メモ書きとも間違われるような手紙だ。
「何これ、なんで手紙なんか……」
メモ書きのような手紙は、二枚あった。
一枚目には短い文で、こう書かれていた。
『これは最後の未来予想です。必ず当たるので、覚悟をもって読んでください。』
最後って、どういう意味……?
最後という二文字を見た瞬間、一度心臓が凍り付いた。
間違いなく葵の字で書かれた手紙だったので、誰かのいたずらとかは考えられなかった。
かと言って、葵が冗談で書いているとも思えない。そんな文体だったのだ。
私は、次の便箋を読むことが怖くて、一度手紙をタンスの上に置いて、すぐに葵の両親の家に電話をかけた。
『はい、もしもし』
電話に出たのは、声のトーンからするに、弟の晴だった。
「もしもし、白戸です。あの、葵って今日そっちに戻る予定なんだよね……?」
『え、そんなこと聞いてませんけど』
「え、嘘やん、葵実家に戻るって言っとったけぇ……!」
『とにかく知りませんから。もう塾に行く時間なので切りますよ』
そう言って、晴は乱暴に受話器を切ってしまった。
解放されたわけではないけれど、また新たに気持ちの切り替えがついた私は、少しだけ足取り軽く帰宅した。
「ばあちゃん、ただいま。疲れたけん、あったかい麦茶あるー?」
「おかえり、よう頑張ったね。ついでにあお君にも持ってってやって」
まだ葵は実家に向かってないのかな……?
それともばあちゃんがつい忘れているだけかな。
そう疑問を抱きながらも、私は麦茶を二人分注いで、二階に向かった。
それから肘で葵の部屋のドアを開けて、中に入った。
「葵、麦茶持ってきとうよー……え?」
しかしそこに葵はおらず、代わりに畳の上に、私が壊したはずの作品が置いてあった。
あんなに粉々に壊したはずの作品たちが、綺麗に復元されて、畳の上に並べられていた。
「どういうこと……葵、いないの?」
当たりを見まわして葵を呼んだが、しんと静まり返った部屋には私の声しか響かなかった。
なんだか嫌な胸騒ぎがして、私はタンスを開けたが、服も何もかもそのまま入っていた。
なんだ、ただの思い込みに過ぎなかったか。
そう安心したところで、タンスの上に『萌音へ』と書かれた一枚の手紙を見つけた、
封筒にも何も入っていない、白い便箋をただ二つ折りにしただけの、メモ書きとも間違われるような手紙だ。
「何これ、なんで手紙なんか……」
メモ書きのような手紙は、二枚あった。
一枚目には短い文で、こう書かれていた。
『これは最後の未来予想です。必ず当たるので、覚悟をもって読んでください。』
最後って、どういう意味……?
最後という二文字を見た瞬間、一度心臓が凍り付いた。
間違いなく葵の字で書かれた手紙だったので、誰かのいたずらとかは考えられなかった。
かと言って、葵が冗談で書いているとも思えない。そんな文体だったのだ。
私は、次の便箋を読むことが怖くて、一度手紙をタンスの上に置いて、すぐに葵の両親の家に電話をかけた。
『はい、もしもし』
電話に出たのは、声のトーンからするに、弟の晴だった。
「もしもし、白戸です。あの、葵って今日そっちに戻る予定なんだよね……?」
『え、そんなこと聞いてませんけど』
「え、嘘やん、葵実家に戻るって言っとったけぇ……!」
『とにかく知りませんから。もう塾に行く時間なので切りますよ』
そう言って、晴は乱暴に受話器を切ってしまった。