そして、数日後、お兄ちゃん家族が町に戻ってきた。

玲美さんがこの町の生活に慣れるまでのしばらくの間、同居することになっている。

お兄ちゃんたちは驚くほど、少ない荷物で現れた。

「しばらくの間、お世話になります」とかしこまった様子で頭を下げるお兄ちゃんに、お父さんは「おう」と短い返事をしただけだったけれど、満足げな顔をしていた。

お母さんは華ちゃんを見た途端、「やっと来たのね!」と駆け寄り抱き上げた。
華ちゃんをあやしながら、玲美さんの体調を気遣い、長旅の疲れをねぎらい、お兄ちゃんやお父さんには荷物を二階に上げるように指令を出して……と、笑えるほど張り切っていた。

六人で食べる夕食は、会話が弾んだ。
初日だからと、お母さんが奮発して鉄板焼きにしたので、いっそう賑やかに感じられた。
これから毎日こんなふうにわいわいと食事ができるのかと思うと、わたしの気持ちも少し上がった。

お父さんとお兄ちゃんはビールを注ぎ合い、お母さんと玲美さんはこのあたりのスーパー事情なんかについて話している。

わたしはその幸せな様子を、まるで映画でも見るような気持ちで眺めていた。

なによりも、小さな子供の存在感が圧倒的だった。その一挙一動に家族が笑ったり驚いたりする。
華ちゃんの存在が、喪失感に苦しむわたしの心を救ってくれるんじゃないかという微かな希望が感じられた。

わたしは何枚もスマホで華ちゃんの写真を撮った。

「なんでこんなにかわいいんだろうねえ」

そう言いながら写真を撮るわたしに、お兄ちゃんが「くるみも“おばバカ”だな」とまんざらでもない顔で笑った。