「コウちゃん、今日はバレンタインですっ」

「そうだぞ、チョコをくれ」

「あげません!」

「なんだお前」


マメと付き合い始めてから約一年。

初めて迎えるバレンタインのはずなのに、マメはなぜかぐずっている。

俺の部屋のベッドに座りふんぞり返りながら、ほっぺたを丸く膨らませている彼女を見て、俺は彼女が怒っている理由を探した。


漫画雑誌を読んでいて放っておいたこと?

それともこの前マメの分のプリンを食べてしまったこと?

もしくはこの前のデートの服装を褒めなかったからか……。


心当たりがありすぎて、首を傾げながらマメを見つめていると、彼女は呆れたというような表情で溜息をついた。


「これはなんでしょう」

「……チョコですね」

「そうです、チョコです。見知らぬ可愛い女の子から預かった、コウちゃん宛のお高いチョコです」