「でも先生、私はこの学校が好きです……」
「そうか。立ってなさい。町田、訳して」
コウちゃんは、どんどん私から遠くなっていく。
これからその距離が縮まることはないんだろうなって、ちゃんと分かってる。
地獄の古典の授業が終わり、梨子に笑われ、クラスメイトにもすっかりバカキャライメージを定着させ、落ち込んで私は帰宅した。
11月とは思えないくらい外は寒くて、これじゃあ12月はどんな防寒対策をすればいいのだと絶望した。もう手は出しつくした。
隣の、コウちゃんの部屋の明かりは、今日もまだついていない。
コウちゃんが帰ってくるのは、いつも私がご飯を食べて、お風呂に入って、髪を乾かして、テレビを観て、自室に戻ってさあ寝ようとした頃、コウちゃんのバイクが止まる音がした。
遮光カーテンを開けて、ベランダに出て、バイクの前にいるコウちゃんを呼んだ。