ねぇ、コウちゃんの良い所をこんなにたくさん知ってるのは私しかいないよ。



「もういいんだよ、コウちゃん、好きな人がいるのに、誰かと付き合うのは、コウちゃんも辛いでしょう……っ?」

コウちゃんにおかえりって言った回数も、コウちゃんのお母さんの次に多いよ。

「本当ちょっとだったけど、コウちゃんの彼女になれて幸せだった」

コウちゃんの色んな仕草や癖や表情を知っているよ。

「ドライブ楽しかったし、運転してるコウちゃんかっこよかった。久々のお買いものも幸せだったし、キスした時はすっごいドキドキした」

嘘をついたときも、悲しいの我慢してるときも、本当は喜んでるときも、分かるよ。

「コウちゃん、でもね、キスは、ちゃんと好きな人としなきゃ駄目だよ」

ねぇ、コウちゃん。それくらいあなたが好きだよ。

「今度は、ちゃんと好きな人を、助手席に乗せてあげてね。約束だよ、コウちゃ……」




――――初めて、コウちゃんが私の前で泣いた。



私を見つめたまま、眉をピクリとも動かさずに、全く声を漏らさずに、静かに。