帰り道、バスの中で「友達できた?」と聞かれて、「うーん」と曖昧に答えたら、えれなは心配して、しょっちゅうわたしのクラスに顔を出してはおしゃべりしていくようになった。

えれながチア部に入ると、わたしのクラスのチア部の子達もおしゃべりに加わるようになって、わたしはまるでチア部の一員みたいになってた。

結局、えれなのおかげで友達ができたようなものだった。

えれなが心配して、わたしの教室に顔を出してくれていなかったら、一年生のときのわたしはずっとひとりぼっちだったかもしれないのだ。

そのせいか、同じグループでも、えれな以外の友達にはどうしても気をつかってしまう。いつも一緒にはいるけど、えれなの友達であって、わたしの友達ではない、そんな歪んだ思いがいつも心のなかにあった。
そして、そう思えば思うほど、みんなと一緒にいる時にはえれなにも言いたいことが言えなくなった。お客様のような立場の自分が、雰囲気をこわしてはいけないと気をつかうのは当たり前だと思ったから。
そして、わたしはその場にふさわしいわたしになれるように、演技するようになった。ありのままの自分では、その場所にいられないとわかっていた。

なにか決めるときには、まずみんなの出方をうかがう。流れがどういう方向に向かうか見定めてから、意見を言えば、突拍子もないことは言わずにすむ。 

学年の誰と誰がつきあいはじめたとか、そういうことには一切興味がもてなかったし、アイドルやファッションの話にも全然関心がなかった。でも、みんなが話しているのを笑顔で聞き、大きく相づちをうち、ときには一緒に手を叩いて笑ってみせた。