しばらくその絵を見ていて、ふと何気なく顔をあげた時だった。


視界の端に、目映い光を感じた。


右側の窓から射し込む陽の光よりも、もっともっと鮮烈な光。


無意識のうちにそちらへと視線を向ける。


廊下のいちばん奥。

突き当たりの壁いっぱいに飾られた大きな額縁。


その中には、見たこともないほど美しい絵があった。


一面、灰色の雲に覆われた、どんよりと沈み込んだような薄暗い世界。

その青みがかった分厚い雲の隙間から、目映い光が射し込んでいる。


ただそれだけの絵だった。

灰色の雲と、雲間から洩れ射す白い光、それだけ。


どうしてだか分からない。

でも、そのとき私は、胸をわしづかみにされたような、圧倒的な衝撃を受けた。

その絵を見た瞬間に心を奪われて、言葉も出なかった。


重暗い雲の割れ目から、圧倒的に明るい光が洩れ出し、その周囲の雲まで仄かに照らされている。

真っ白な光は雲に遮られて幾筋にも分かれ、それでも揺らぐことも歪むこともなく、まっすぐに地上へと伸びていく。


その光は、紛れもない希望に見えた。

絶望の世界を鮮やかに切り裂く、希望の光。


その光はただただまっすぐに、静かに、優しく世界に降り注ぐ。


息を呑むほど美しい絵だった。