「言いたいことがあるなら、言えよ。黙ってたって誰も分かってなんかくれねえよ」


そんなこと、知ってる。

誰かに分かってほしいなんて思わないから、何も言わないだけなの。


「ほら、言えよ。叫べ。言いたいことは叫べ!」


言いながら青磁が私の両肩をつかみ、教室に向かって立たせる。


「伝えたいことは口に出さなきゃ伝わらねえんだよ。黙ってたら一生伝わらねえままなんだよ。だから、言うべきことは言え! 叫べ! ほら、今すぐここで、叫べ!」


青磁がどんっと私の背中を叩いた。

叫べ、と何度も言いながら。


私は涙を流しながら首を横に振った。


言えない。言えるわけがない。


だって、思ったことを言ったら、言うべきことを言ったら、またああいうふうになるかもしれない。

あのときみたいに、なるかもしれない。


きっと、なる。


だから言えない。

言いたくても、飲み込んで、我慢するしかない。


「……いて」


あえぐような吐息とともに唇から洩れた声は、掠れて震えていた。


青磁が「あ?」と不機嫌そうに訊き返してくる。


あんたみたいなやつに、私の気持ちが分かるわけない。

あんたみたいに好き勝手なことばっかりやってるやつに、好き勝手なことばっかりできるやつに、分かるわけない。


「……ほっといて!!」


叩きつけるように言って、私は青磁を押し退けて駆け出した。


もうこれ以上、ここにはいられなかった。

いたくなかった。