なんでそんなこと言われなきゃいけないの。

そう思って、眉根を寄せて青磁を見る。


すると彼は、いまいましげに舌打ちをした。


「なんで顔には出せて、口には出せねえんだよ?」


焦れたように、苛々したように言う。


当たり前でしょ。

思ったことをなんでも口に出していいのは、ほんの小さい子供の時だけ。

人を傷つけることでも平気で口にするあんたと、私は違うの。


そんな言葉をぶつけてやりたいけれど、ドアの向こうの教室にいるクラスメイトたちのことをかんがえると、言えない。

せっかくやる気になってくれているのに、ここで私と青磁がもめたら、水を差すことになってしまう。


激情を堪えている私を、青磁は冷ややかに見つめていた。


「そうやって、黙って耐えてたら」


そう言った声もまた冷ややかだった。


「何も言わずに我慢してたら、いつか誰かが気づいてくれると思ってるのか」


青磁は右の口角を少しあげて、小馬鹿にするように小さく笑って言う。


「いつか誰かが自分のつらさに気づいてくれて、協力したり助けてくれたりするとでも思ってんのか」


冷たい言葉だった。

その視線よりも、声よりも、何よりもその言葉の内容が、冷たく私の胸に突き刺さった。