「しゃあねえ、俺が監督・演出してやる。さっさとそこに並べ、下手くそども!」


そんなひどい言葉にも、彼らは笑いながら素直に従った。

うそ、と目を剥きながら周りを見ると、役者以外の人たちも、いつの間にかそれぞれに話し合いや準備を始めていた。


いかにも文化祭前らしい、活気のある雰囲気の教室。

その真ん中で私は呆然として、なんで、と唇だけで呟く。


なんでみんな青磁の言うことは聞くの?

私があんなに頑張って頼んでも、全然動いてくれなかったのに。

こんな横暴で口の悪い青磁にはどうして従うの?


込み上げるような感情が全身を支配して、息もできないくらいに苦しくなった。

誰にも気づかれないようにそっと移動し、教室を出る。


そしてポケットに手を突っ込む。

でも、探していたものは見つからなかった。

そういえば青磁に取り上げられたのだ。


仕方なく、右手の爪を左手の指先に立てて、ぐっと食い込ませる。

びりりと痛みが走って、血が出てきて、その鮮やかな色を見ると、やっと息が少しだけ楽になった。


壁に背をもたれて、ぼんやりと天井の染みを見つめる。

それからずるずるとしゃがみこみ、廊下にうずくまった。


膝の間に顔を埋ずめて、心の波が引いていくのを待つ。

でも、なかなか感情の渦はおさまらない。