「今まで準備に参加してなかったから、その分働いてやるって言ってんだよ。なんか文句あるか?」


青磁は腕組みをして偉そうに言い放つ。

なんであんたが、と言いたかったけれど、みんなが頷くのを見ていると私は何も言えない。


「よし。じゃあ、さっそくやるか。劇だからまずは役者が大事だよな。さあ、やってみろ」


青磁は近くにあった椅子にどすっと腰を落とし、役者陣に顎で指示をする。


主役の二人が顔を見合わせ、気まずそうに青磁を見た。


「やってみろって、急に言われても……」

「まだ台詞も全然覚えてないし」

「は? まじかよ。まあ、台本見ながらでいいからやってみろ」


そう言われて彼らは渋々と演技を始めたけれど、案の定、台本に釘付けになりながら立ちすくんで台詞を読むだけだった。

立ち位置さえ把握できていないのを見て、マスクの中にため息が充満する。

本当に何も分かっていないのだ、私以外の人は。


私の横で見ていた青磁は、途中から苛々したように顔をしかめながら顎をあげていた。

そして、彼らのたどたどしい演技を途中で遮り、間に入っていく。


「おいおい、まじかよ。ひでえか! こんなん、全校生徒の前でやるつもりか? いくらなんでもあんまりだろ」


いつものように歯に衣着せぬ口調で罵倒する。

みんなが傷つくのではないかと気が気ではなかったけれど、意外にも役者陣は「だよねー」と照れたような笑みを浮かべた。