睫毛の長さまで分かるほど間近に、青磁の顔がある。


切れ長の綺麗な形をした瞳がじっと私を見つめている。

すっと通った鼻筋も、形の好い唇も、滑らかな肌も尖った顎も、むかつくくらい綺麗だ。


見ていたくなくて、私は両手をつかまれたまま顔を背けた。


「……血まみれ」


ペンを握った私の左手の指先を食い入るように見ていた青磁が呟いた。


「自分でやったんだよな」


答える義理なんかないので、私は黙っている。

それを肯定と取ったようで、青磁は呆れたように息を吐いた。


「お前、馬鹿じゃねえの」


私の左手首をつかむ青磁の右手に、ぐっと力が込められた。

ぎりぎりと締め上げられて、思わず拳を開いてしまう。

握りしめていたペンが、かしゃんと軽い音を立てて床に落ちた。


「………」


何も言えずに視線を落とし、廊下に転がったまま死んだように動かないペンを見つめる。

青磁が舌打ちをした。


「お前見てると、本当に苛々する」

「……じゃあ見なければいいでしょ」


そんなに私が嫌いなら、視界に入れなければいい。

ましてや、話しかけてなんかこなければいい。


私だって青磁なんか見たくないし、青磁の視界にも入りたくない。

もちろん口もききたくない。


それなのに近づいてくるのはあんたのほうでしょ。