見ないといけないのは役者陣だけではない。
大道具や小道具、衣装係のほうの進捗状況がどうなっているのかも確認しておかないといけない。
彼らの様子を見に行くと、床に座り込んで作業をしていると思っていたのに、手を動かさずにおしゃべりをしたり、スマホで動画を見たりゲームをしたりしているだけだった。
「……どう? 進んでる?」
「あっ、茜。うーん、今ねえ、作業止まっちゃって」
「なんで?」
「絵の具が無くなっちゃって」
「じゃあ、買いに行かなきゃね」
「それがさあ、買い出しって自転車いるじゃん? うちらみんな電車通学だから、買いに行けないんだよね。宗平がチャリ通だから、あいつに頼むしかないんだ」
「宗平はどこ?」
「いまお昼ごはん食べに行ってる」
そう、と答えた声は小さすぎて、マスクの中で消えてしまった。
それ以上なにも言えずに私は教室を出る。
全く進まない準備の様子を、これ以上見ているのはつらかった。
どうしよう。
どうしたらみんな危機感と責任感を持って、本気で準備や練習に取り組んでくれる?
どうすればいい?
そのとき通知音が鳴ったので、私はポケットの携帯を取り出した。
『今日は早く帰ってきて玲奈のお迎えよろしく』
お母さんからのメッセージ。
笑顔の絵文字つき。
学校が忙しいと何度も言ったのに、夏休みだから暇でしょ、と色々なことを頼まれてしまう。
お母さんだってたまには息抜きしたいのよ、と言って玲奈の世話などを頼んでくるけれど、それなら私はいつ息を抜けばいいのだろう。
大道具や小道具、衣装係のほうの進捗状況がどうなっているのかも確認しておかないといけない。
彼らの様子を見に行くと、床に座り込んで作業をしていると思っていたのに、手を動かさずにおしゃべりをしたり、スマホで動画を見たりゲームをしたりしているだけだった。
「……どう? 進んでる?」
「あっ、茜。うーん、今ねえ、作業止まっちゃって」
「なんで?」
「絵の具が無くなっちゃって」
「じゃあ、買いに行かなきゃね」
「それがさあ、買い出しって自転車いるじゃん? うちらみんな電車通学だから、買いに行けないんだよね。宗平がチャリ通だから、あいつに頼むしかないんだ」
「宗平はどこ?」
「いまお昼ごはん食べに行ってる」
そう、と答えた声は小さすぎて、マスクの中で消えてしまった。
それ以上なにも言えずに私は教室を出る。
全く進まない準備の様子を、これ以上見ているのはつらかった。
どうしよう。
どうしたらみんな危機感と責任感を持って、本気で準備や練習に取り組んでくれる?
どうすればいい?
そのとき通知音が鳴ったので、私はポケットの携帯を取り出した。
『今日は早く帰ってきて玲奈のお迎えよろしく』
お母さんからのメッセージ。
笑顔の絵文字つき。
学校が忙しいと何度も言ったのに、夏休みだから暇でしょ、と色々なことを頼まれてしまう。
お母さんだってたまには息抜きしたいのよ、と言って玲奈の世話などを頼んでくるけれど、それなら私はいつ息を抜けばいいのだろう。