は? という声が喉元まで上ってきたけれど、なんとか抑える。


「……そっか。家族旅行なら、どうしようもないよね」


笑顔がひきつっていないか心配だった。

でも、笑顔が上手くいかないときは大抵、口許や頬がおかしくなるわけで、マスクをつけていれば大丈夫だ。


でも、それから役者陣の数人が、都合が悪いだの部活があるだのと言って、練習に参加できないと立て続けに言ってきたので、私の焦りと苛立ちはさらに募った。


どうしよう。

このままだと本当に間に合わない。

まともな練習は一度だって出来ていないのに、みんなの予定が合わなければ、全員揃っての通し練習ができないまま本番を迎えることにもなりかねない。


先生に相談したい。

でも先生はいつも『丹羽に全部任せたよ』と言うばかりで、まともに取り合ってもくれない。


心がぐらぐらと揺れるのを抑えるために、私は口を開いた。


「……とりあえず、今日はほとんど全員そろってるから、台詞合わせしよう。主役の二人がいないとできないから」

「はーい」

「じゃあ、二時ちょうどに始めるから、それまでに台詞の確認して、できれば少しでも覚えるようにしてね」

「がんばりまーす」


彼らが台本を開き始めたのを確認して、私はその場を離れた。