「ねえ、役者の人たち、ちょっと集まってくれる?」


教室に入ると、いつもよりは多い人数が集まっていた。

毎日のように、でもしつこくならないように言葉を選びながら、必死にグループラインで呼びかけた努力が報われた、と嬉しく思いながら私は役者陣に声をかけた。


「今後の動きについて確認しとけって、先生から言われてるから」


お姫様役の友里亜、王子役の健斗がスマホをいじりながらやってくる。

他の役者たちも、あまりやる気の見えない態度でゆっくりと集まってきた。


なんで私だけがこんなに気を揉んでいるんだろう、と思いつつ、話を始める。


「脚本はもうみんな持ってるよね」

「うん、持ってる」

「あ、俺まだだわ」

「じゃ、これ持って行って。それでね、もうそろそろ本格的に練習しなきゃやばいなって思ってて」

「あー、そうだよね、あと二週間? で本番だもんね」

「まじか。早いなあ」

「そうなの。だから、今日は台詞合わせをして、台本覚えてきてもらって、明日からは動きの確認しながら演技の練習やりたいんだよね」


私が一気にそう言うと、健斗が困ったような顔になった。


「うわ、ちょっと待って、俺、明日は遊びの予定入れちゃったんだよなー」

「……そうなの。じゃ、仕方ないか。なら、明後日から……」

「茜、ごめーん、あたし明後日から家族旅行!」


友里亜が手を合わせて謝ってきた。