「見りゃ分かんだろ」


青磁はこ憎らしい口調で答えた。

むかっときたけれど、反論する気力もない。


「興味もないくせに訊くなよな」

「………」


自分だって、私になんかなんの興味もないのに、『何してるんだ』とか訊いてきたくせに。


「あれか、社交辞令ってやつか。つまんねえの」


どうしてこういちいち癇に障る言い方ができるのだろう。

腹が立ったけれど、まともにやりあったらこちらが疲れるだけだと思い、黙ってあらぬ方向に視線を投げた。


その時ふと、青磁はクラスのライングループに入っていないことを思い出した。

というか、彼は携帯電話を持っていないのだ。

理由は『要らないから』というシンプルなものらしい。


『実は今、クラスで文化祭の準備してるんだ』と言おうかな、と思いつく。

委員長として言うべきだと思った。


そして、『人手不足だから手伝いにきて』とも言えたらいい。


でも、私は結局、何も言う気になれず、黙っていた。

青磁が来たところで手伝ってくれるとは思えないのできっと空気が悪くなるだけだし、そもそも頼んでも来てくれるとは思えなかった。

たぶん、『は? めんどくせえな、行くわけないだろ』と返されて終わりだ。

これ以上不愉快な思いをさせられるくらいなら、何も言わないほうがいい。


「……じゃ、私、行くから」


顔も見ずにそう言って、私は教室のほうへとあるきだす。

青磁の視線が追いかけてくるような気がしたけれど、きっと気のせいだ。