教室の中の空気が重くなったところで、がらりとドアが開いた。


「おー、やってるなあ」


担任の先生がにこにこしながら入ってくる。


「あれ、でも、これだけ?」


はい、と答えると、先生は眉をひそめた。


「おいおい、大丈夫かあ? というか、脚本はできたのか?」

「いえ、脚本係の二人に訊いてみたら、まだ後半ができてないって言ってました。前半は貰ってます。あとで人数分コピーお願いします」

「それはいいけど、しかしまだ半分って……。あと一ヶ月だぞ。あと、そろそろ台詞合わせとか、役の練習しないといかんだろ?」

「ですよね……」

「で? 主役の二人は?」

「あ、今日は都合が悪くて来れないって」

「おいおい……劇なんだから、主役がいないと始まらんだろ。ほかの主要登場人物も来ないと。丹羽からそう伝えといてくれ」


はい、と頷いたものの、気が重くなる。


そういうことは先生から言ってほしい。

私がクラスメイトに『練習があるから必ず来て』だなんて催促するのは、かなり言い方が難しい。


「じゃあ、よろしく頼んだぞ」


はい、もう一度答えると、先生は教室から出て行った。

みんなは私と先生の話を聞いていたのかいなかったのか、そ知らぬ顔をしていた。