どこかぎこちない顔つきでこちらの様子を窺っていたクラスメイトたちは、私が笑って言い返したのを見てほっとしたように自分たちの会話へ戻っていった。


青磁は眉根をよせて私を見ている。

それから小さく舌打ちをして、「うぜえ」と吐き捨てて席を立った。


そのまま教室から出ていこうとするので、担任が気づいて「おい、深川。勝手に出るなよ」と声をかける。

青磁は振り向きもせずに「便所!」と叫び返して、乱暴にドアを開けて廊下へと出ていった。


教室の空気がふっと緩むのが分かった。


見るともなく私を見る視線が集まってくるのを感じる。

私はマスクを押さえながら、「ほんと青磁って口悪いよねー、最悪」と沙耶香に笑いかけた。

すると彼女は私の肩をぽんっとたたき、自分の席につく。


亮太からは「気にすんなよ、茜」と声をかけられた。


その瞬間、かっと頭に血が昇った。


なんなのよ、むかつく。

そんな慰めるような励ますようなこと、しないでよ。


私が傷ついたみたいになるじゃない。

青磁に傷つけられたみたいになるじゃない。


私が惨めなやつみたいになるじゃない。


やめてよね、ほんと。

さらっと笑って流してくれればいいのに。


そんな感情を吐き出す出口など私の身体にはついてない。

だから私はうつむいた。

胸元に当たったマスクがずりあがり、目のすぐ下まで覆い隠すのを感じた。