そう言った瞬間、お母さんは黙りこんだ。

どうしたんだろう、と思っていると、唐突に『それって、男の子?』と訊ねられた。


少し迷ったけれど、嘘をつきたくはないし、ごまかす必要もないと思ったので、うん、と正直に答えた。


『……そういうこと。男の子と二人でさぼり? ……何を考えてるんだか、まったく』


この言葉でお母さんの勘違いに気づき、すぐに「違うよ」と声をあげた。

でも、ただの言い訳だと思われたようで、呆れたように『もういいから、早く行きなさい』とだけ言われてすぐに通話が切れた。


携帯電話を耳に当てたまま、呆然とする。

ブランコをやめて、そのへんに転がっていた野球のボールを空へ放り投げて遊んでいた青磁が、怪訝そうな顔で振り向いた。


「何? どうした?」

「……なんでもない」

「なんでもないって顔じゃねえけど」

「なんでもないの!」


苛立って、思わず強い声で返した。

青磁は肩をすくめて黙った。


「……学校、行く」

「は? 平気なのかよ」

「平気」

「まだ顔青いぞ」


確かに気分はまだ悪かった。

胸の奥のほうがむかむかしている。

でも。


「……ほっといて」


ぽつりと言うと、青磁は「へいへい」と肩をすくめた。