青磁が苦虫を噛み潰したような顔になった。


「……なんだよ、それ。マスク依存症とでも言うつもりか?」


私は俯いて、「たぶん」と小さく答える。


スニーカーの足を動かすと、砂とこすれてざりっと鳴った。

淡い色の砂粒が、光を浴びてきらきらと輝いている。


「……くっだらねえ。知るか」


吐き捨てるように言って、青磁はブランコから飛び降り、公園を出ていった。


帰ろうかな、と思った。

家に帰ればマスクがある。

でも、この時間だとお母さんと玲奈がまだ家にいるかもしれない。

なんで帰ってきたの、などと訊かれたら嫌だった。


頭に靄がかかったようにぼんやりしていて、うまく思考ができない。

ぼうっとしていたら、足音が聞こえてきた。

誰か来たと思って、慌ててハンカチを口許に当てる。

見ると、コンビニの袋をぶらさげた青磁だった。


「……戻って来たの?」


思わず呟くと、青磁は「は?」と眉をあげて、そのまま近づいてくる。

そして袋からミネラルウォーターのペットボトルを取り出し、私の横にことんと置いた。


「口ゆすげ」


ありがと、と私は呟いた。

確かにさっき吐いたもののせいで口の中が気持ち悪かった。


言われた通りに口をゆすいでいると、青磁が「あと」と声をあげる。