また口許を押さえて下を向く。

追いついた青磁は、私の隣に立って「やっぱりな」と呆れたように呟いた。


もう胃の中は空っぽなので、吐き気はあるのに吐けない。

苦しさと気持ちの悪さだけだ。


「こっち来い」


どうしようもない吐き気と戦っていると、青磁が私の手を再びつかんでゆっくりと歩き出した。

私は右手を青磁につかまれ、左手はハンカチを持って口許に押し当てながら歩いた。


駅に背を向けて、通学路から外れて、細い道へと入っていく。

両側に樹が植えられていて、その葉陰に入ると日光が遮られて涼しかった。


こんな道があったんだ、と驚く。

私はいつも駅と家を往復するだけなので、この道には足を踏み入れたこともなかった。


少し歩いたところで、青磁が方向を変えた。

彼が私を連れて入ったのは、小さな公園だった。

壊れかけの遊具がぽつぽつ立っているだけの、妙に寂しい感じのする公園だ。


うちの近くに大きな公園があって、このあたりの子供たちはほとんどがそこで遊ぶので、この公園はきっと夕方になっても寂れているんだろう、と思った。


青磁は私をベンチに座らせ、自分はその隣にあるブランコに座った。

後ろに枝葉の多い樹があって、その日陰に入った私は、首筋に涼しい風を感じながら目を閉じた。


きい、きい、と金属がこすれあう音がする。

薄目を開けると、青磁がブランコを立ちこぎしていた。


相変わらず自由なやつ。