そのときまた、空気を裂くような高い音が踊り場に響いた。

見ると、青磁が笛を吹きながら階段を上っている。


しかも、下手。何度も音が裏返っている。

そのくせ、本人はやけに楽しそうにピーヒャララ、と吹いているのだ。


こういうところも嫌いだ。

非常識で、マナーが悪い。

自分のことしか考えていないし、周りへの迷惑なんて思いもつかないらしい。


苛立って緊張がほどけてしまったせいか、今まで抑えていた足音を立ててしまった。

やばい、と思ったときにはもう、青磁の視線が降ってきていた。


「………」

「………」


二人の間に沈黙が流れる。

ピー、と青磁がまた笛を吹いた。

空気読めよ、と思ってしまう。


私は青磁を無視することに決めた。

クラスのみんなの視線があるときは、彼と私の間に確執があるのを見せるわけにいかないので、他の子と同じように接している。

でも、誰も見ていない場所でなら取り繕う必要もない。


私は青磁の横を素通りしようと、手すりに身を寄せながら上った。


まっすぐな視線が追いかけてくるのを感じる。


マスクをつまんで目の下まで上げた。

そうしながら、なんで見るのよ、と内心で突っ込む。


青磁は私のことが嫌いなくせに、いつも遠慮も容赦もなくまっすぐに私を見るのだ。

無視してくれればいいのに。

そしたら私だって楽なのに。