「幻滅なんてするはずないでしょ」

「………?」

「だって、私は青磁のこと、好きだから」


きっぱりと言い切った。

彼に信じてもらうために、少しもぶれてはいけない。


「きらきらしてる青磁のことも好きだけど、私だけに見せてくれる弱さも好きだよ。それってすごく嬉しいから」


青磁は戸惑うような顔をしていた。

その手を両手で捧げもって、額をつける。


「……ねえ、青磁。青磁はね、私の世界を変えてくれたの。青磁の絵に出会って、私の世界はすっごく綺麗なものになった。青磁からもらったたくさんの言葉で、私は生まれ変わって、自分の気持ちを外に出せるようになったの」


青磁を包み込む不安や恐怖をすべて消し去ってあげたい。

でも、きっとそれは無理だから。

だから、私は。


「青磁、大好きだよ」


なぜか涙が溢れて、止まらない。


「本当に、本当に、大好き。青磁がいない毎日なんて、もう考えられない。青磁と離れてる間、寂しくて悲しくて、どうにかなりそうだった。私はもう青磁から離れられないの。だから……」


言葉も涙も、とめどなく私の中から湧き上がって、溢れ出していく。

胸がいっぱいだった。愛しさでいっぱいだった。


大切な彼を、私は病気や死の恐怖から守れない。だから。


「……側にいさせて」


見開かれた硝子玉の瞳の中に、涙をぽろぽろこぼしながら笑う私がいた。


「それだけでいいの。ただ、隣にいて、青磁の絵を見続けたい。何気ない話をしたい。それだけでいい。青磁の側にいたい」


大きすぎる恐怖を消してあげることはできないとしても、たとえほんの一部でも貰ってあげることさえできないとしても。

ただ側に寄り添って、大きすぎるそれを一緒に耐えることはできるはずだから。