「そしたら案の定、腫瘍らしき影が映ってるって言われて……」


呼吸が止まる。

再発――。

私は呆然と目を見開いて青磁を見た。


「そんな顔すんな」


青磁がくすりと笑う。


「そのあと入院して詳しい検査受けて、良性の腫瘍だって診断されたからさ」


その言葉に、全身が脱力しそうなほどの安堵を覚えた。

よかった。よかった、本当に。


「でも、結果は良かったけど……」


青磁が笑顔を消してぽつりと呟いたので、私の鼓動がまた早まる。


「その入院の間、俺はまた、中学のときみたいに、馬鹿みたいに怯えながら過ごしてたんだ。再発は死亡率があがる、もう駄目かも、今度こそ死ぬかも、って、がたがた震えながら……」


私の両手の中の青磁の手が、徐々に力を失っていくのが分かった。

つなぎとめるように、強く、強く握りしめる。


「再発はしてないって言われても、百パーセントは喜べなかった。だって、またいつか再発しないとは言い切れない。もしかしたら来年、再発するかもしれない。……そう思ったら、俺は一生こうやって病気に怯えながら生きるんだなって気がしてきて……」


太陽はいつのまにか空高くのぼっていて、頭上から降り注ぐ光が青磁の顔に濃い陰影をつくっていた。


「……こんな情けない自分は嫌なんだ。茜に幻滅されて嫌われるのが怖い……だからお前から逃げたんだよ」


彼は前を見つめたまま、静かに言葉を紡いだ。

その真剣な表情を見ながら、私は唇に笑みが浮かぶのを自覚する。


「そんなわけないじゃない」


青磁とは正反対の明るい声が弾けた。

怪訝そうな顔で青磁がこちらを向く。