「その笑い方むかつくから嫌いって何回も言ったのに、お前まったく笑い方変えないからさ、ずっと苛々してた」

「笑い方が嫌いなんて言ってなかったよ。ただ、気に入らないとか嫌いとかむかつくとかって。言葉足らなすぎでしょ」

「そうか? 分かるだろ、普通」

「分かんないって」


あのころは本当に青磁のことが大嫌いだったな、と懐かしく思い出す。

でも、今は。


「だって、お前の笑顔が好きだったから。作り笑いなんか見たくなかったんだよ」


さらりと言ってのける青磁は、やっぱりすごい。


「ついでに言うと、間違ったことが許せなくて、言いたいことは思いきりぶちまけて、相手がどんなでも食ってかかる強さも、好きだった」


連続で爆弾を投げ込まれたような気分になって、私は両手で顔を覆った。

もう、今にも火が出そうだ。


「だから、高校生になったお前が、言いたいこと言わずにのみこんで、作り笑いで周りのご機嫌とってるの、見てるだけで嫌な気分になったんだよ」

「……うん、ごめん」

「謝るなよ」


俯いた頭を、ぽんぽん、と撫でられる。


「そうなったのには事情があったんだって分かったし。それに、美術室とか屋上にいるときの茜は昔通りだったから、俺にだけは本当の自分見せてくれてんだって、嬉しかったよ」