自分の鼓動の音がうるさいくらいだ。


それに、頬が熱い。

たぶん顔中が真っ赤になっている。

マスクがないから隠せなくて、恥ずかしい。


でも、青磁も同じように赤いから、まあいいか、と思う。

思ったのに。


「あのときから、茜のことずっと気になってた」


青磁のその言葉に、さらに顔の温度があがるのが分かった。


「でも、お前、あれからしばらくしてサッカーに来なくなって……」

「うん。あのことがあって、ふさぎこんでたから……」


小学五年の二学期に、あの集団無視が始まって、私はサッカー観戦どころではなくなってしまったのだ。


「いつかまた会えないかなって思ってたよ、ずっと。会ったら今度こそ話しかけようって」


まさか青磁がそんなことを言うなんて、驚きだった。

どんな顔をすればいいか分からなくて俯く。


「でも、やっと高校で再会できたと思ったら、お前、なんか変な顔になってたからさ。まじでむかついた」


歯に衣着せない口調に、恥ずかしさも吹き飛んで笑ってしまう。


「変な顔って、ほんと青磁って失礼だよね」

「だって本当のことだろ。昔はあんなに楽しそうに笑ってたのにさ、なんかアンドロイドみたいに不自然な作り笑い貼りつけて俺に声かけてくんだもん、いらついたよ」


高校で初めて言葉を交わしたのは、窓から桜の花びらが舞い込む廊下だった。

私が声をかけると、青磁は不機嫌な顔で、『俺、お前のこと、嫌い』と答えたのだ。