春、河川敷、サッカーの試合、と聞いて、ふいに浮かんだ光景があった。


きらきら光る川の水面と、河川敷のサッカーゴールと、その脇にある満開の桜の木。


「あ……ちょっと思い出したかも」


私は土手の斜面の芝生に腰をおろして、試合を観戦していた。


「あのときの試合ってさ、地元のサッカー界を牛耳ってるお偉いさんが主催だったんだよ。元Jリーガーで、サッカー協会の役員だとかで、めちゃくちゃ有名で力のあるおっさん」

「へえ、そうなんだ」

「でもさ、そいつの息子が、すげえ問題児で」


その言葉にも、なにか引っ掛かりを感じた。

身体が大きくて、きつそうな目付きをした男の子の顔がふっと思い浮かぶ。


「俺らがそいつのチームと当たったときに、そいつはかなり上手くて負け知らずだったんだけど、俺らが調子よくて、先に点数入れちゃったんだよ」


青磁が懐かしげに目を細めて笑った。


「後半の半分くらいまできて、二対〇になった。そしたらそいつさ、完全に頭に血昇っちゃったみたいで。わざと足ひっかけて転ばせたり、服とか腕とかつかんで邪魔したり、しまいには体当たりまでしてきやがって」

「うわ……最低。そんなの反則でしょ」

「だろ? でもさ、そいつはお偉いさんの息子だから、審判やってるおっさんも、他のチームのコーチとか監督も、なんも言えないんだよな。黙って見てんの」