「ねえ、あれは、いつの私?」


訊ねると、青磁が目を見開く。


「……え? いつって……」

「小学生の私だよね?」


青磁がぽかんと口を開いた。


「だって、高校生になってから、私、あんなふうに笑ったことない。でも、あれは私の本当の笑顔だって分かったよ。青磁は私の作り笑いじゃない顔を、本当の笑顔を見たことがあったんだね。小学生のころに」

「……お前、なんで、それを」


唖然としている青磁がおかしくて、笑いながら私は答える。


「お兄ちゃんがね、青磁のこと教えてくれたの。小学生のとき、サッカークラブで一緒だったって。私も会ったことあるはずだって」

「……まじか」


青磁がうめくように言って、頭を抱えた。

見ると、腕の隙間から覗く耳たぶが真っ赤に染まっている。


「なに照れてんの?」

「……いや、そりゃ、恥ずかしいだろ。ガキのころの茜の笑顔ずっと覚えてて、絵に描くとか……」

「そう? 私は嬉しいよ」


思ったままに答えると、青磁はばつの悪そうな顔で私を見た。


「……まあ、それならいいけど」


それからまた大きなため息をつく。

その横顔に「ねえ、青磁」と声をかけた。


「私、小学生のころのこと、覚えてないの。ごめん」

「あー、まあ、そうだろうな」

「だから、私たちがどうやって出会ったか、教えて?」