マスクの中で熱い嗚咽が洩れる。


青磁に会いたい。

青磁の顔が見たい。

青磁の声が聞きたい。


今すぐ青磁に会いに行こう。

迷惑がられたって、嫌がられたって構わない。


最後に目に灼きつけるように絵を凝視してから、私は美術展の会場をあとにした。


回廊を歩いて、階下に降りる階段へと向かう。


その途中で、私の目は吸い寄せられるように一階のホールに向かった。


吹き抜けになった空間の底。

たくさんの人が歩いたり、立ち止まったり、話したりしている。

その真ん中で、硝子張りの天井から燦々と降り注ぐ陽の光を全身に受けながら立っている姿。


青磁だ。

こちらに背を向けているし、遠くてはっきりとは見えないけれど、私には分かる。


青磁の姿は、どんなに離れていても、たくさんの人に囲まれていても、私の目には誰よりもきらきら輝いて見えるから。


彼は、きっちりとしたスーツを着た偉そうなおじさん二人と会話をしているようだった。

大賞をとったことに関係しているのかもしれない。


回廊の手すりにつかまって視線を落とし、その様子をしばらく見つめていると、青磁が彼らとの会話を終えたらしく、こちらへと歩き出した。


会場を見に来るのだろうか。

それなら、会える。


期待に胸を膨らませながら見つめていると、ふいに青磁が目をあげた。