どれくらい時間が経ったころだろう。
やっとのことで衝撃がおさまって、少しずつ落ち着きを取り戻した私は、足を踏み出して絵に近づいた。
近くで見ると、無数に重ねられた淡い色の油絵の具が、細かい凹凸に光を反射させている。
その筆の跡のひとつひとつに描き手の息吹きを感じられるような気がして、無性に嬉しくなった。
下に貼られたカードを見る。
『大賞 色葉高等学校二年 深川青磁』
青磁、という文字を指先でなぞる。
愛おしさが込み上げてきた。
青磁、と呟く。
次の瞬間、作品のタイトルが目に入って、時が止まった。
周りにいるたくさんの人たちの足音も、ひそひそ話の声も、なにも聞こえなくなった。
題名欄に書かれた文字しか見えなくなった。
『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』
それが、この絵のタイトルだった。
瞬く間に時が巻き戻されて、二ヶ月前を思い出す。
私が読んだ小説の中に出てきた台詞を、青磁に教えた。
夜明けに会いたいと思った人が、一緒に朝焼けを見たいと思った人が、あなたにとっていちばん大切な人。
私は視線をあげて絵を見る。
優しい筆致で描かれた私と見つめ合う。
溢れる涙に瞳を潤ませながら、それでも心から嬉しそうに輝くような笑みを浮かべている私。
頬がひんやりとして、自分も泣いていることに気がついた。
やっとのことで衝撃がおさまって、少しずつ落ち着きを取り戻した私は、足を踏み出して絵に近づいた。
近くで見ると、無数に重ねられた淡い色の油絵の具が、細かい凹凸に光を反射させている。
その筆の跡のひとつひとつに描き手の息吹きを感じられるような気がして、無性に嬉しくなった。
下に貼られたカードを見る。
『大賞 色葉高等学校二年 深川青磁』
青磁、という文字を指先でなぞる。
愛おしさが込み上げてきた。
青磁、と呟く。
次の瞬間、作品のタイトルが目に入って、時が止まった。
周りにいるたくさんの人たちの足音も、ひそひそ話の声も、なにも聞こえなくなった。
題名欄に書かれた文字しか見えなくなった。
『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』
それが、この絵のタイトルだった。
瞬く間に時が巻き戻されて、二ヶ月前を思い出す。
私が読んだ小説の中に出てきた台詞を、青磁に教えた。
夜明けに会いたいと思った人が、一緒に朝焼けを見たいと思った人が、あなたにとっていちばん大切な人。
私は視線をあげて絵を見る。
優しい筆致で描かれた私と見つめ合う。
溢れる涙に瞳を潤ませながら、それでも心から嬉しそうに輝くような笑みを浮かべている私。
頬がひんやりとして、自分も泣いていることに気がついた。