私の反応で全てを察したのか、お兄ちゃんが『しまった』とでも言いたげな表情になる。


「知らなかったのか……」

「……どう、いうこと? 病気って」


震える声でなんとか呟いたけれど、お兄ちゃんは答えずに首を横に振った。


「ごめん、聞かなかったことにしてくれ。本人が言わなかったことなら、俺から聞くべきことじゃない」


そう言ってお兄ちゃんが腰をあげ、話を切り上げようとしたので、私はお兄ちゃんのトレーナーの裾をつかんで止めた。


「待って、お兄ちゃん! 教えて、青磁は病気なの?」

「……あいつが隠してるなら、勝手に教えるわけにはいかないよ」

「そんな……! 無理だよ、ここまで知って、聞かなかったことになんてできない!」


きまり悪そうな顔で視線をそらすお兄ちゃんにすがりつくようにして、必死に訴える。

青磁が病気だというのが本当なのか、だとしたらなんの病気なのか、知らずにいられるわけがなかった。


「ねえ、お兄ちゃん、お願い……。青磁には言わないから。知らないふりするから。だから教えて」

「………」

「なんの病気なの? 重い病気なの?」


自分で言ってから、全身が凍りそうなほど寒くなった。

もしかして、治らないような病気なんだろうか。

だとしたら……。


背筋が寒くなって、ぶるっと身体が震える。

怖かった。

言葉にならないくらいに怖かった。


でも、お兄ちゃんは私をちらりと見て、「いや」と首を横に振った。