「そりゃ、大きくなってからは会ってないけど、あいつってなんか忘れられない顔してるからさ。この前、玄関でちらっと見ただけですぐ分かったよ」


驚きでぼんやりしている頭をフル回転させて、青磁とお兄ちゃんが顔を合わせるタイミングがあったことを思い出した。


私が彼と朝焼けを見に行った日だ。

私を迎えに来て玄関の外で待っていた青磁を、いつになく早起きをしてきたお兄ちゃんは階段の下から見たのだろう。


まさか二人が顔見知りだったなんて、二人ともなにも言わないから、まったく気づかなかった。


「お兄ちゃん、いつの間に青磁と知り合いになったの?」

「……は?」


お兄ちゃんはさっきよりもさらに怪訝な面持ちになった。

その奇妙な顔を見ながら、こんなにたくさんお兄ちゃんと会話したのは一体いつぶりだろう、と私はふと関係のないことを考える。


そうしているうちに、お兄ちゃんがなにかに気がついたように、はっと目を見張った。


「お前……もしかして、あいつのこと覚えてないのか?」

「え? どういうこと?」


お兄ちゃんはしばらく考えるような顔つきをして、それから「あのさ」と口を開いた。


「お前、青磁とどこで知り合ったの?」

「どこって……高校だけど。二年で同じクラスになって」

「やっぱり、そうか」


お兄ちゃんが頭を抱える。

それから疲れたようにカーペットの上に腰をおろして私を見た。


「茜と青磁は、高校が初対面じゃない。小学生の時に会ってるよ」