青磁がまた前を向いてしまった。


もしかして置いていかれるのかと思ったけれど、彼はそのまま佇んでいる。

なにか言葉を続けようかと悩んでいたら、ふいに青磁が「そうだよ」と小さく言った。


「お前の言う通りだよ……俺は、お前に、怒ってる」


噛み締めるように、確かめるように、言い聞かせるように。


「だから、……もう、終わりだ」


吐き捨てるように言って、青磁はゆっくりと歩き出した。


終わり、という言葉に、心臓がぎゅっと掴まれた気がした。

俯いてしまいたくなる。


でも、だめだ。

ここで諦めたら、もう二度と。

だから。


「――青磁!」


離れていく背中に声をぶつける。

震える足で踏み込んで、追いかける。


「青磁……! お願い、終わりなんて言わないで。何度でも謝るから、許してくれるまで謝るから、だから……っ」


隣に並んで、その冷たい横顔を見上げる。

青磁はなにも聞こえていないかのように、前だけを見て歩いていた。


「青磁。ねえ、青磁」


銀色に光る髪の下で、形のいい眉がぐっとひそめられるのが見えた。

ちゃんと聞こえてるんだ、と分かって、少しほっとする。


今ここで言いたいことを言っておかないと後悔すると、分かっていた。

だから、どんなに迷惑がられても、言わなきゃ。