教室棟に向かう渡り廊下を進んでいく青磁の後を追う。


両側の窓から、淡い冬の陽射しが射し込んで、青磁のほっそりとした姿を柔らかく照らし出している。


鼓動が高まるのを、抑えようがなかった。


ねえ、青磁。

どうして優しくするの?

いつもあんなに冷たいのに、どうして今日は、そんなに優しくしてくれるの?


それなのに、背中しか見せてくれないのは、視線を向けてくれないのは、どうして?

どうして声すら聞かせてくれないの?



窓硝子から伝わってくる冷気で、渡り廊下は凍えそうなほど寒かった。

吐く息が白い。

ノートを持つ指が切れそうなほど冷えきっていく。


窓の外には、ぼんやりと一面灰色の雲に覆われた空と、枯れた木々の寒そうな枝、そして凍ったように動かない校舎。

しんと静まり返って、全てが時を止めたかのようなうすら寒い世界。


その中で、私の目には、青磁の姿だけがきらきらと輝いて見えた。


やっぱり、青磁のことが好きだ。


どんなに怒らせてしまっても、嫌われてしまっても。

素っ気なくされても、冷たくされても。


どうしようもなく彼が好きだ。


かたくなな背中を見つめながら、ふと気がつく。


もしかして、これは最後のチャンスなんじゃないか。

青磁との関係をもう一度やり直すための、最後のチャンスなんじゃないか。


今を逃したら、もう二度と私は青磁と関わることができなくなってしまうんじゃないか。