青磁は私に気づいているのかいないのか、いつものようにマイペースな足どりで歩いている。

ときどき窓の外に目を向けて、冬の空の薄い青をじっと見つめる。


ああ、青磁だ。

前と全然変わらない。

マイペースで、空が大好きな青磁だ。


そう思った途端に、胸の奥からせりあがってくるような切なさに支配された。


青磁は変わらない。

変わったのは、私と彼との距離だけ。

彼の隣にいられなくなった私だけ。


青磁の足跡をなぞるように、ゆっくりと歩く。

職員室に着くと、青磁がドアを開けて先生を呼んでいるところだった。


「おー、来たか」


先生がにこにこしながらやってくる。

私は青磁の五歩ぶんほど後ろに立って、先生に目を向けた。


「悪いけどな、深川、丹羽」

「はい」

「四階の進路指導室に行って、取ってきてほしいものがあるんだけど、頼まれてくれるか」

「あー、まあ、いいっすよ」

「そうか、助かる。あのな、進路指導室の前の机に、進路ノートっていう冊子がクラス全員ぶん置いてあるから、二人で教室まで運んでほしいんだ」


二人で、というところで先生が語気を強めた気がして、私は目をあげた。

すると先生が、含みのある笑みで私を見た。


どうやら、気をきかせてくれたらしい。

私と青磁が二人きりになれるように。


先生も私たちの様子がおかしいことには気づいているはずだから、仲直りをさせようと考えているのだろう。

でも、それは無理だ。

青磁には仲直りをしようなんて気は少しもないから。